5/22に、3作目のアルバム「Enigmatica」をリリースしました。
(ストリーミング&ダウンロードは下記リンクから⏬)
作った背景や全体のコンセプトは、以前のnoteで書いてあるので、ここでは楽曲ごとのセルフ解説をします。 「セルフ解説するのダサい」とか「痛い」とかよく見ますが、大手メディアから取材されてる訳でもないのに、作った本人が語らなかったら伝わらないままだろ、と思うので、僕は自分の作品についてはいつもガッツリ話します(笑
#1 The Beginning Of The End
元々は去年作った、ハリウッドSF風重厚オーケストラ+バンド、という説明でAudiostockに提供していた曲。試聴回数が他の曲と比べて圧倒的に多く、でもBGM用途としてはあまり合わなかったのか聴かれる割に売上は伸びず、それなら自分のソロ曲にしようと思って今回アルバムに入れました。
この曲の持つSF感、ファンタジー感が個人的に好きで、この曲をベースにアルバム全体のコンセプトを考えたので、Enigmaticaのメインテーマ曲のような位置付けです。
アルバムに入れるにあたって、パーカッションとドラムの音源を差し替えたのと、原曲では弱かった低音を、5弦ベースをガッツリ入れて補強し、ミックスをやり直しました。
「終わりの始まり」という意味のタイトルで、戦争なのか災害なのか、社会変動なのか、気候や環境の変化なのか色々あると思うんですが、そういった、それまでは当たり前だったことが絶望的に変わっていく最初のきっかけと、気づいたら取り返しがつかないことになっていた、というようなことをテーマに作りました。
#2 Vapor Trail
Enigmaticaに限らず、アルバムを作る時は最初に全体の構成から考えます。
1曲目はこれで、最後はこの曲、途中でこうしてこうなって…みたいな曲調とその並びをイメージして、すでに出来上がっている曲があれば当てはめて、足りないものを作っていくんですが、
今回、曲順を考えているうちにアクセント的に速い曲欲しいなと思っていたので、今年の2月頃に書き下ろしたのがこのVapor Trailです。
最初の着想は、FFのサントラとかにたまに出てくる、弦楽オーケストラとロックバンドが合体したような曲をやってみたいと思ったところから始まってます。
弦の音を何度もいじってるうちに「空」のイメージが生まれて、途中の弦楽器でのキメフレーズや、低音や高音が入ったり抜けたりという音像で、空間的に上下に目まぐるしく動くような雰囲気が作れたので、曲としても「空中戦」という視覚的なイメージで、タイトルの意味も「飛行機雲」という言葉でVapor Trailにしました。
1曲目で「終わりの始まり」が始まって、それを受けて世界が分断されて空を舞台に争うことになった、そんなストーリーになっています。
#3 Terra Firma
この曲もVapor Trailの後に書き下ろしたもので、空をやったから次は地上がいいな、というイメージで作ってみました。
アコースティックギターとバイオリンの音色から、広大な草原をイメージして作り始めたんですが、このアルバムはサイバーパンクがテーマなので、グリッチノイズやシンセを入れて、アコースティックな楽器のパートの隙間からデジタリックなノイズが混入してくる=「VRで再現されたフェイクの大地」というコンセプトでアレンジを考えてます。
ちなみにこの曲、BPM116なんですが、この116っていうBPMは人間をリラックスさせて集中力を上げるのに適しているテンポ感だというのをここで見たことがあり、狙って116にしたわけじゃないんですが、何度も聴きながら気持ちいいBPM値を探ったらたまたまこの数字になった、という裏話がありまして、あなたの作業用BGMにぜひ加えてもらえたら嬉しいです(笑
2曲目で空中戦をした後に、敵に撃たれて不時着した兵士が、VRで映し出されたデジタルの広大な大地を歩いて自陣まで戻る…、そんな場面でしょうか。
#4 Sprinkle (Enigmatic mix)
この曲は2021年に出したシングルで、周囲の人からはよく「エモい」と言われるピアノインストです。
昔、Vintage Childというインストバンドをやっていて、しょうもない理由で解散したんですが、その頃にピアノを中心にした曲を多くやったので、その影響か自分のアルバム「Sound Sphere」でもピアノインストを入れており、その流れを汲む曲です。
ピアノが全く弾けない自分が作ったにしては正直名曲だと自負しておりまして、シングルとして出していたけど、アルバムを出すならどうしても入れたかった曲です。
幸いにもサイバーな雰囲気のパートや、ファンタジックなムードのエンディングなどがあって、Enigmaticaに入ってても違和感のない曲調だったので、今回はアレンジは全く変えずに、シングルでは細かったローを補強する形でミックスをやり直すにとどめました。
アルバムの構想が出来る前からある曲ですが、この流れで聴くとしたら、3曲目でVRのフィールドを彷徨った兵士が一時の安息の場を見つけ、でもそこでも危機があって、だけど最後にはまた空へ昇って帰還する、というようなお話です。後付けであっても、ストーリーがつながるような曲構成には自信があります。
#5 Red & Blue
これは2021年の秋頃にダブステップをやってみようと思って作ってみた曲です。
Red & Blueというのは映画「マトリックス」で、赤い薬か青い薬を選ぶ有名なシーンのオマージュで、曲の雰囲気もマトリックスの戦闘シーンをイメージしました。
どちらかいうと現代を再現したマトリックス世界というよりは、ザイオンがある、人間社会が滅んだリアルな世界の方の雰囲気を表現しています。
オーケストラ的じゃない、デジタルサウンドとしてのハリウッド劇判というイントロ〜ヴァース〜ビルドアップに、ダブステップ的なドロップをつける、という構成でダークでシリアスな雰囲気にしてみました。
アルバムの流れ的には、4曲目で帰還した兵士が、始まってしまった「終わり」を止めるために、敵の陣中に乗り込んでいった先で起こる戦闘、というストーリーになっていると思います。
#6 In A Spiral Way -Synthesis-
これもシングルで去年出した「In A Spiral Way」をアレンジしたものです。
元々「宇宙」をイメージして作った曲だったので、より宇宙感がするようにシンセとサンプルだけを駆使してプログレッシブハウス的なアレンジにしてみました。
結構前半の方にキャッチーでロックな曲が続いたので、この曲と「Red & Blue」はそれと対比して、よりディープな、聴く人を選ぶ感じの雰囲気でメロディがどうのというよりはグルーヴと音色を楽しんでもらうというEDM的な作りになっています。
5曲目での戦いを経て、「終わりの始まり」とは何なのかの真理を追ってより深淵な世界、もしかしたらそこは宇宙かもしれない、というところまで来てしまい、物語はクライマックス…という展開です。
#7 Re:boot
今回のアルバムのラストにして唯一の歌もの曲です。
ボーカルをお願いしたのは、去年のシングル「雪月花」を歌ってもらったがきえさんで、最初は雪月花をアルバムに入れたかったんだけど、さすがに今回のアルバムとは世界が違すぎるので、別の曲を用意してお願いしました。
ここ最近、メロディックダブステップやエモーショナルフューチャーベースにハマっていて、その辺の音楽を今の自分なりに解釈してやってみました。
「The Beginning Of The End」がアルバムのストーリーにおけるメインテーマだとしたら、このRe:bootはエンディングテーマのような存在で、さりげなく「The Beginnning Of The End」のメロディをほぼそのまま引用したパートがあり、映画やゲームの劇判やサントラだと、同じメロディをアレンジ違いで複数曲用意する手法はよくあるので、こういったところでも「劇判やサントラの影響」が表れてます。
作詞も自分でやってまして、英語詞で全編作ったのは初めてだったけど、なかなか良い仕上がりなんじゃないかと思っております。(歌詞の中の「青を選んでいたら」というくだりも、マトリックスのオマージュです)
アルバムのストーリーとしては、「終わりの始まり」を回避するために世界を「再起動」した…、という表の話がありつつ、実はこのRe:bootは、「創作活動に苦しむ全てのジャンルのクリエイター」の姿を歌ったもので、「このアルバムを作っていた時のochi本人の心境」というメタ的な要素も表現していたりします。
創作の悩みを解決して、自分の作るものが進化することは「それまでの自分の終わり」で、「新しい自分が始まる」、でも「作る本人は変わっていないから変化というよりも再起動した」ということがこのEnigmatica全体のテーマでした。
でも、聴き手の方は、そんなことを気にする必要なく、音だけで楽しめるような音楽にしているつもりなので、1つの音楽コンテンツとして楽しんでもらえたら幸いです。
ちなみにEnigmaticaという言葉は「不可思議」という意味で、1つのアルバムに複数のタイプの、ジャンルを跨った曲を横断させる自分の作品は、他の人からは奇異に見えるだろうなあ、ということでこのタイトルをつけました。
世間で言う分かりやすさはあまりないし、聴きなれない音も多いEnigmaticaですが、その分ディープで濃い世界をお求めの方には何かしら響くと思います。
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